菓子製造業許可とは?申請の手順や必要書類・費用を紹介

「和菓子や洋菓子を作って販売したい」「カフェや喫茶店の開業を予定している」このようにお考えであれば「菓子製造業」の許可証が必要となります。

しかし、あまり聞き馴染みのない菓子製造業の許可証を、どのようにして申請すればよいのかわからない人も多いはずです。

そこで当記事では、菓子製造業の許可証についての詳細や、申請するために必要な条件などについてご紹介します。

菓子製造業許可とは?

菓子製造業に携わるには許可証が必要です。以下では菓子製造業の定義から営業許可証の種類、営業許可が必要な業種まで解説します。

菓子製造業許可

菓子製造業の定義

まずは「菓子製造業」の定義から改めて確認していきましょう。

「菓子製造業」は、厚生労働省の定める営業許可を必要とする32業種のひとつです。(※)

菓子製造業では、パン類、ケーキ類、飴、せんべい、チューインガムといった菓子類の製造が認められています。また、2021年6月の法改正により、あん類が含まれる餅なども製造・販売することが可能となりました。

似ているものに「飲食店営業許可」がありますが、こちらはカフェや喫茶店など、店舗で飲食を提供する際に必要となります。

(※)パン製造業及びあん類製造業を含み、第26号(複合型そうざい製造業)及び第28号(複合型冷凍食品製造業)の営業を除く。

引用:営業許可業種の解説|厚生労働省

お菓子関連の営業許可証の種類

営業を予定している店舗でどのようなお菓子類を製造・販売するかにもよりますが、お菓子関連の営業許可証には次のような種類があります。

  • 菓子製造業許可:和菓子、洋菓子、パン、ケーキ類、あん類の製造・販売に必要
  • 飲食店営業許可:菓子と食事をするスペースを提供する場合(いわゆるイートイン)に必要
  • アイスクリーム類製造業許可:アイスクリーム類の製造・販売に必要

食品衛生法に基づく営業許可が必要な32業種

食品衛生法が2021年6月に改正され、営業許可証が必要な業種が34業種から32業種に変更となりました。食品衛生法改正後に営業許可が必要な32業種は以下の通りです。

  1. 飲食店営業
  2. 調理の機能を有する自動販売機により食品を調理し、調理された食品を販売する営業
  3. 食肉販売業
  4. 魚介類販売業
  5. 魚介類競り売り営業
  6. 集乳業
  7. 乳処理業
  8. 特別牛乳搾取処理業
  9. 食肉処理業
  10. 食品の放射線照射業
  11. 菓子製造業
  12. アイスクリーム類製造業
  13. 乳製品製造業
  14. 清涼飲料水製造業
  15. 食肉製品製造業
  16. 水産製品製造業
  17. 氷雪製造業
  18. 液卵製造業
  19. 食用油脂製造業
  20. みそ又はしょうゆ製造業
  21. 酒類製造業
  22. 豆腐製造業
  23. 納豆製造業
  24. 麺類製造業
  25. そうざい製造業
  26. 複合型そうざい製造業
  27. 冷凍食品製造業
  28. 複合型冷凍食品製造業
  29. 漬物製造業
  30. 密封包装食品製造業
  31. 食品の小分け業
  32. 添加物製造業

出典:営業許可業種の解説|厚生労働省

イートインの店舗は菓子製造営業許可と飲食店営業許可の両方を取得する

お菓子類やケーキ類、パン類を店舗で製造・販売し、持ち帰ってもらうのであれば「菓子製造業許可」だけで問題ありません。しかし、イートインをお考えであれば「菓子製造業許可」に加えて「飲食店営業許可」も必要です。衛生面やトラブル対策のため定められています。

将来的にイートインスペースを設ける、もしくは喫茶店でパン類やケーキ類も提供するとお考えであれば「菓子製造営業許可」と「飲食店営業許可」の両方を取得しておくことをおすすめします。

菓子製造業許可を取得するために必要なこと

菓子製造業許可

「菓子製造業許可」を習得するには、次の条件を満たす必要があります。ただし、自治体によって基準が異なるため、あらかじめ保健所に確認しましょう。

  • 食品衛生責任者を設置
  • 施設基準を考慮した施設と設備を整える

「菓子製造業許可」の取得条件について、以下で詳しく解説します。

食品衛生責任者を設置

「菓子製造業許可」の取得には、施設ごとに1名以上の「食品衛生責任者」を配置する必要があります。

食品衛生責任者の役割は次のとおりです。

  • 従業員の健康管理
  • 手洗いの指導
  • 清掃状況のチェック
  • 食材の管理方法のチェック

「食品衛生責任者」の資格取得には「食品衛生責任者養成講習」を受講した後に、テストに合格する必要があります。テスト内容はそれほど難しくなく、講習さえちゃんと受けていればほぼ取得が可能です。

ただし、以下の資格を取得している場合は講習が免除されます。

  • 医師
  • 歯科医師
  • 薬剤師
  • 獣医師
  • 栄養士
  • 調理師
  • 製菓衛生師
  • 船舶料理士
  • 食鳥処理衛生管理者
  • 食品衛生管理者
  • 食品衛生監視員の資格を有している者
  • 食品衛生指導員又は食品衛生指導員であった者
  • 他の都道府県等において食品衛生責任者の資格を有していた者

食品衛生責任者養成講習の受講には、10,000円程度の受講費がかかります。講習が免除される資格の取得者は、申請に2,000円程度必要です。

施設基準を考慮した施設と設備を整える

「菓子製造業許可」には、施設の「共通基準」や「特定基準」を満たす必要があります。各自治体で基準が異なるため、事前に確認しておきましょう。

一例として、東京都で定めている「共通基準」と「特定基準」をご紹介します。

共通基準

共通基準では、自動販売機以外の「営業施設の構造」「食品取扱設備」「給水及び汚物処理」に、以下のような基準を設けています。

○営業施設の構造

項目規定内容
場所・衛生的である
建物・十分な耐久性が
区画・目的にあわせて壁や板で区切る
面積・十分な広さがある
・耐水性の材料を使い清掃がしやすい
内壁・床から1mまで耐水性の材料を使っている・清掃がしやすい
天井・清掃がしやすい
明るさ・50ルクス以上
換気・換気扇などでばい煙、蒸気等の排除が可能
周囲の構造・地面は耐水性の材料で舗装されている・水はけがよく清掃しやすい
ねずみ族、昆虫等の防除・ネズミや昆虫の防除設備が整っている
洗浄設備・食材や食品、器具などを洗う流水式洗浄設備が整っている・従業員専用の流水受槽式手洗い設備と消毒装置が備え付けられている
更衣室・更衣室が衛生的である・もしくは作業場外に更衣室を設ける

○食品取扱設備

項目規定内容
器具等の整備・必要量の器具や容器包装を揃える
器具等の配置・移動が難しい機械類は、作業しやすく清掃・洗浄のしやすい場所に配置する
保管設備・食材や食品、器具類を衛生的に保管できる設備であること
器具等の材質・耐水性の素材を使う・洗浄しやすい・熱湯や蒸気、殺菌剤等で洗浄できるものを使用する
運搬具・必要であれば防虫、防塵、保冷が可能で清潔な食品運搬具を備える
計器類・冷蔵、殺菌、加熱、圧搾などの設備は、見やすい位置に温度計や圧力計を備える・必要であれば計量器を備える

○給水及び汚物処理

項目規定内容
給水設備・水道水や飲用可能な水を豊富に受給できること・貯水槽は衛生的な構造であること・島しょ部など飲用可能な水が得られない場合は、ろ過や殺菌等の設備を設ける
便所・作業場に影響しない場所や構造・従業員数に応じた数を設置する・ネズミや昆虫等の防除設備が整っていること・専用の流水受槽式手洗い設備や手指の消毒装置を設ける
汚物処理設備・蓋があり耐水性で十分な容量がある・清掃がしやすい・汚液や汚臭が漏れない構造である
清掃器具の格納設備作業場専用の清掃器具と収納スペースがある

共通基準とは、「3つの要素」から衛生面や施設上の基準のことで、「菓子製造業許可」を取得するためには全ての条件を満たす必要があります。

その3つの要素は、「構造」と「食品等の取り扱いの設備」、「給水及び汚物処理」から形成されています。

これらの要素には、さらに詳しい条件が多くあり、条件を満たす際の場合によっては、大規模な工事や工夫が必要となるケースもあるので、開業を予定している方は要チェックです。

特定基準

特定基準は共通基準とは違い、業種ごとに各々基準が決められています。東京都の場合、菓子製造業は次のように規定が設けられています。

項目規定内容
施設及び区画・施設は製造、発酵、加工、包装を行う場所・製品の置き場やその他の必要な設備を設ける・作業区運に応じて区画する・作業場外に原料倉庫を設ける
機械器具・製造量に応じて個数や能力のある混合気、焼き窯、平鍋、蒸し器、焙焼機、成形機、その他機械器具を設ける・必要であれば冷蔵設備を設ける

菓子製造業許可申請の手順

菓子製造業許可の申請は保健所で行います。ただし、管轄の保健所によって菓子製造業許可の申請の手順は異なるため、事前に保健所に相談しておきましょう。

菓子製造業許可申請は、基本的に次の手順で行われます。

菓子製造業許可ステップアップ

①食品衛生責任者及びそれに準ずる者の資格証明書を準備

②施設の設計を保健所へ事前相談

③設備の施行

④保健所に菓子製造業許可を申請

⑤施設検査

⑥営業許可書の交付

以下で詳しく解説します。

①食品衛生責任者及びそれに準ずる者の資格証明書を準備

菓子製造業許可の申請には、施設に1人以上の食品衛生責任者を配置することが義務付けられています。

すでに菓子製造業許可の資格を持っている、もしくは講習の免除に該当する資格を有する人以外は、管轄の食品衛生協会で「食品衛生責任者養成講習会」を受講する必要があります。

②施設の設計を保健所へ事前相談

菓子製造業許可には、施設の条件を満たす必要があります。ですが、いきなり工事に着手するのではなく、まずは管轄の保健所に施設の図面を持参し、施設の基準をクリアーしているかを相談しておきましょう。

③設備の施行

保健所に相談した結果、施設の設備に不備があった場合、上記でご紹介した施設の条件を満たすために改築や器具の補充などを行う必要があります。

④保健所に菓子製造業許可を申請

食品衛生責任者の配置や設備の施行が開始したら、保健所に提出する申請書類を準備しましょう。施設が整う10日ほど前を目安に書類を保健所に提出しましょう。申請には16,800円ほどの費用がかかります。

⑤施設検査

施設が条件を満たしているか、申請した内容と間違いがないかなど、保健所が施設の検査を行います。施設が全ての条件を満たしていない場合は、改善後に再度検査を受ける必要があります。

⑥営業許可書の交付

保健所の検査を受けた結果、施設が全ての条件を満たしたと認められたら、営業許可証が交付されます。保健所に赴く際は「営業許可書交付予定日のお知らせ」と認印を持参しましょう。交付後は、営業許可証と食品衛生責任者の名札を店内に掲示する必要があります。

申請に必要な書類

菓子製造業許可の申請には書類が必要です。自治体により異なるため、事前に保健所に確認しておくことをおすすめします。

例として、東京都で菓子製造許可の申請をする場合、必要な書類は次の通りになります。

  • 営業許可申請書
  • 許可申請に必要な手数料
  • 施設の図面
  • 周囲の見取り図
  • 食品衛生責任者を証明するもの
  • 登記事項証明書(法人のみ)
  • 水質検査成績書(井戸水を使用の場合)

申請にかかる費用や有効期限は自治体によって異なる

菓子製造業許可を申請する際は、事前に管轄の保健所に確認をしてください。

今回ご紹介したのは東京都で申請をした場合を例にしています。

各自治自体によって、申請にかかる費用や有効期限は異なる点に注意してください。

申請にかかる費用は14,000円~17,000円が多い

菓子造業許可の申請にかかる手数料は、14,000円~17,000円が一般的です。カフェや喫茶店のように、店舗でお菓子などを提供する場合は別途「飲食店営業許可」の申請に手数料がかかります。

お菓子類の他にアイスクリーム類も取り扱う予定であれば、さらに「アイスクリーム類製造業」の許可を申請するために手数料が必要です。

ただし「アイスクリームも提供するが、メインはお菓子」というケースでは、菓子製造業許可だけでもいいという場合もありますので、あらかじめ管轄の保健所に確認しておくといいでしょう。

有効期限は5年以上と定められている

菓子製造業許可などの「食品営業許可」は、一度取得すればよいというわけではありません。食品営業居はには有効期限があり、定期的に更新する必要があります。

食品営業許可の有効期限は、多くの自治体で5~8年と定めています。有効期限が近くなったら、期限切れになる10日前までに更新手続きをするといいでしょう。

営業許可を取得せず販売したらどうなるのか?

菓子製造業許可を取得していない、もしくは菓子製造業許可の有効期限が切れた状態でお菓子類を製造・販売すると、食品衛生法違反に該当します。その場合、2年以上の懲役または200万円以下の罰金が課せられます。

まとめ|菓子製造営業許可申請の基準を満たせるよう準備をしよう

当記事では今回、菓子製造業許可の申請手順や必要書類、申請にかかる手数料について解説しました。

和菓子屋や洋菓子や、カフェや喫茶店の経営をお考えであれば「菓子製造許可」の申請は必要不可欠です。アイスクリーム類も提供する予定であれば「アイスクリーム類製造業許可」といった具合に、提供する飲食によって許可が必要になります。

さらに、店舗でのイートインを予定しているのであれば「飲食店営業許可」も申請しなくてはいけません。

これらの許可を申請するには、次のような条件を満たす必要があります。

  • 食品衛生責任者を設置
  • 施設基準を考慮した施設と設備を整える

これらの条件が整ったら、申請書類等を持参して保健所で申請手続きを行いましょう。営業許可の申請には14,000円~17,000円ほどの手数料がかかります。

また、営業許可は定期的に更新作業が必要です。更新をしない、もしくは許可を取らずに菓子類を販売すると食品衛生法違反に該当し、2年以上の懲役または200万円以下の罰金が課せられるため注意しましょう。

これから和菓子の製造・販売や喫茶店などの経営をお考えであれば、菓子製造営業許可申請の基準を満たせるよう準備しましょう。

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この記事を書いた人

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渡邊友佳子

2020年なごみやに入社。前職では銀座あけぼのにて16年間、和菓子・米菓の商品企画を担当。東京製菓学校卒業後、茗荷谷「一幸庵」にて3年間修業。TORAYACAFE勤務。プライベートでもお菓子が大好きです。<資格>製菓衛生士、表示検定中級