お菓子の賞味期限・消費期限の設定に迷っている方に決める方法をご紹介します。厚生労働省と農林水産省が共同で作成した「食品期限表示の設定のためのガイドライン」を踏まえて、賞味期限・消費期限決める必要があります。実際に何をしたらいいの?という方に詳しく説明をさせていただきます。
賞味期限とは
定められた方法により保存した場合において、期待されるすべての品質の保持が十分に可能であると認められる期限を示す年月日を賞味期限といいます。ただし、当該期限を超えた場合であっても、これらの品質が保持されていることとします。指示された保存方法で未開封で美味しく食べられる期限で、製造から6日以上の食品を賞味期限で設定します。
消費期限とは
定められた方法により保存した場合において、腐敗、変敗その他品質の劣化に伴い安全性を欠くこととなるおそれがないと認められる期限を示す年月日をいいます。製造からおおむね5日以内が期限の食品を消費期限として設定します。
賞味期限・消費期限は菓子製造者、製造メーカーが決めます
賞味期限や消費期限は、「食品期限表示の設定のためのガイドライン」を踏まえて、製造者や製造メーカーが評価して決定します。
賞味期限は、原材料、製造工程、包装材料、保存方法などを考慮し、製造者やメーカーが保存試験や食味テストを行い、その結果をもとに設定されます。
消費期限は、製品の性質や使用する原材料によって異なります。製造者やメーカーは、消費期限が過ぎた食品は食中毒を引き起こす可能性があるため、安全面を十分に考慮して決定します。
賞味期限と消費期限どう決める?
賞味期限と消費期限の決め方は、食品の種類や製造方法、保存方法、消費時の安全性や品質を総合的に判断して決めます。
「食品期限表示の設定のためのガイドライン」に基づき、製造者やメーカーは、食品の種類や製造方法、保存方法、消費時の安全性や品質を総合的に考慮し、科学的なデータをもとに、賞味期限や消費期限を設定しています。
「食品期限表示の設定のためのガイドライン」
厚生労働省、農林水産省が示している「食品期限表示の設定のためのガイドライン」は4項目あります。
(1)食品の特性に配慮した客観的な項目(指標)の設定
(2)食品の特性に応じた「安全係数」の設定
(3)特性が類似している食品に関する期限の設定
(4)情報の提供
詳細は消費者庁HP「食品期限表示の設定のためのガイドライン」の参照を推奨いたします。
「食品期限表示の設定のためのガイドライン」=お菓子の場合どう考える?
「食品期限表示の設定のためのガイドライン」を読んだけれど、お菓子の場合どう考えたらいい?と悩んでしまう方に、詳しく説明をします。
(1)お菓子の場合「食品の特性に配慮した客観的な項目(指標)の設定」
菓子やスイーツ類の場合、食品の特性に配慮した客観的な項目(指標)の設定としては、以下のようなものが挙げられます。
- 水分含有量:菓子は、乾燥したものから水分を含んだものまで、様々な水分含有量の製品があります。水分含有量が多いほど、腐敗や変質のリスクが高まるため、製品ごとに適切な水分含有量を設定することが重要です。
- 脂肪含有量:菓子には、植物油脂や動物性油脂が含まれることが多いため、脂肪含有量の管理も重要です。脂肪含有量が高い製品は、保存や品質の維持に工夫が必要です。
- pH値:pH値は、食品の酸性度合いを表す指標で、微生物の繁殖に影響を与えます。製品ごとに適切なpH値を設定することで、微生物の繁殖を抑制できます。
- 糖分含有量:菓子は、砂糖や果糖などの糖分が含まれることが多いため、糖分含有量の管理も重要です。糖分含有量が低い商品は、腐敗や変質のリスクが高まるため、製品ごとに適切な糖分含有量を設定することが必要です。
- 保存温度・湿度:菓子の保存温度や湿度は、製品の品質や安全性に影響を与えます。高温多湿の環境では、微生物の繁殖や品質の低下が起こりやすくなります。製品ごとに適切な保存温度や湿度を設定することが重要です。
(2)お菓子の場合「食品の特性に応じた「安全係数」の設定とは
菓子などの食品において、「安全係数」とは、製品に含まれる微生物や化学物質の許容範囲に対して、より厳しい基準を設けて消費・賞味期限を決めることを指します。
設定された期限に対して、1未満の係数をかけるのが基本で、客観的指標から得られた期限よりも短い期間を設定します。
例えば、安全係数を0.8とする場合には40日間の賞味期限を設定する場合に、
40日間×1.25=50日間までの検査項目をクリアする必要があります。
菓子製造者、製造メーカーで安全係数の自社基準を設定しましょう。安全係数を0.8に設定することが多いですが決まりはありません。掛率は以下のようになります。
・安全係数0.9に設定する場合:1÷0.9=1.11
・安全係数0.8に設定する場合:1÷0.8=1.25
・安全係数0.7に設定する場合:1÷0.7=1.43
(3)お菓子の場合「特性が類似している食品に関する期限の設定」
菓子などの食品において、特性が類似している食品に関する期限の設定は、製品の特性や製造工程などを考慮して行われます。
例えば、スナック菓子やクッキーなどの乾燥製品には、微生物の繁殖や化学変化のリスクが低く、賞味期限が比較的長く設定されることがあります。一方、生菓子やチョコレートなどの高脂肪製品やクリームサンドなどの高水分製品には、微生物の繁殖や脂肪の酸化などのリスクが高く、賞味期限が比較的短く設定されることがあります。
また、製品ごとに異なる特性を持つため、同じ種類の菓子でも製品ごとに賞味期限が異なる場合があります。そのため、製品ごとに適切な賞味期限を設定することが重要であり、製品の特性や製造工程、保存環境などを考慮して、適切な期限を設定する必要があります。
(4)情報の提供
期限表示を行う製造業者等は、期限設定の設定根拠に関する資料などを整備・保管し、
消費者などから求められたときには情報提供するように努めましょう。新商品の開発時の資料や製造ごとの保存試験を保管しておくことが大切です。
実際はどうしてる?賞味期限と消費期限決めるために製造者が行っていること
食品衛生法やガイドラインはありますが、実際に賞味期限・消費期限を決めるために行っている保存テスト、食味テストについてお菓子商品開発の経験からお伝えします。以下の4項目を踏まえて、製造者や製造メーカーで決定をします。
(1)商品設計の段階から目指す賞味期限・消費期限を設定する
類似商品やお菓子のカテゴリが同じ商品の消費期限、賞味期限をリサーチして、目指す消費期限、賞味期限を決めます。
(2)賞味期限・消費期限を設定するお菓子で検討すべきこと
<賞味期限を設定するお菓子で検討すべきこと>
賞味期限を保つためには密封資材に鮮度保持剤や窒素充填、殺菌等で商品の状態を維持する必要があります。お菓子の種類に合った方法を選択して賞味期限を担保しましょう。
①鮮度保持剤を使用する
お菓子の賞味期限を長く保つには鮮度保持剤が有効です。「乾燥剤」「脱酸素剤」等があり、密封した袋や容器に入れることで食品の美味しさや鮮度を保つ働きがあります。クッキーやあられ、せんべいなど水分量の少ないお菓子には「乾燥剤」を入れることで水分を吸収して、お菓子の湿気を防ぐことができます。どら焼き、焼き饅頭、フィナンシェ、マドレーなど、しっとりしたお菓子に「脱酸素剤」を入れます。酸素を吸収して、食品の劣化を防ぐことができます。パッケージサイズ、お菓子のサイズに応じて、鮮度保持剤のサイズが変わりますので使用する際には仕入れ先を通して、製造メーカーに確認をしましょう。
②窒素を充填する
自動包装機で包装をする場合には窒素充填を選択できます。窒素充填とは、食品を空気から保護するために、パッケージ内に窒素ガスを充填することを指します。菓子などの乾燥食品は、空気中の酸素によって品質が劣化しやすいため、窒素充填によって酸化や菌の繁殖を抑制し、商品の鮮度や美味しさを保つことができます。
③殺菌をする
殺菌をすることで無菌状態にして常温でも長期保存をすることが可能になります。水羊羹、ゼリー、くずきりなどカップに充填したり、密封する商品はボイル殺菌、レトルト殺菌が有効です。100℃以上の高圧で、レトルト釜により殺菌することをレトルト殺菌、100℃未満の加熱して殺菌することをボイル殺菌といいます。お菓子の糖度、pH、お菓子の種類によって時間や温度が変えて設定します。
④袋やフィルムの材質選び
袋やフィルムに使用する材質によって賞味期限に影響があります。酸素透過度の低いフィルムやアルミフィルムなど、お菓子に合った材質を選択することも賞味期限に関わってきますので、性能と価格で比較をしましょう。
<消費期限を設定するお菓子で検討すべきこと>
目指す消費期限まで毎日試食をして、離水、風味での劣化を確認します。劣化を感じる日より、前が消費期限となります。どうしても消費期限を延ばす必要がある場合には、糖度を上げる、生菌剤(グリシン等)の添加等で菌数を抑えることもできます。また、保存方法が冷蔵、常温のどちらかも決める必要があり、試食をする場合にも設定温度帯で行う必要があります。
(3)保存試験に提出する
保存試験は社内の品質管理で行うか、食品の検査会社に依頼しましょう。販売時と同じパッケージ、条件で行います。賞味期限、消費期限を設定するための保存試験の条件例です。保存試験を提出するときの参考にしてください。
<例:賞味期限を設定する場合の保存試験条件>
・保存期間の設定:(1)で決めた期間×1.25(安全係数0.8)を保存期間とします。
例)30日間×1.25=37.5 38日を保存期間
・保存条件:常温ならば、25℃の設定が一般的です。過酷な条件ならば30℃設定
・検査項目:一般生菌、大腸菌群、黄色ブドウ球菌
・検査日程:初発、賞味期限日、保存期間日の3日間は行いたいですが、変化を知りたい場合には初発から賞味期限の間に数回検査することもあります。
<例:消費期限を設定する場合の保存試験条件>
・保存期間の設定:(1)で決めた期間×1.25(安全係数0.8)を保存期間とします。
例)3日間×1.25=3.75 4日間で検査項目が合格なら消費期限3日と設定
・保存条件:常温ならば、25℃の設定が一般的です。過酷な条件ならば30℃設定
冷蔵ならば、10℃以下
・検査項目:一般生菌数、大腸菌群、黄色ブドウ球菌
・検査日程:初発、消費期限、保存期間
<検査項目の評価>
検査項目の評価は自治体ごとに数値が異なったり、販売先の基準もあるため、保健所などに相談の上、自社で基準を設けます。一般的な数値をご紹介します。
・初発時の一般生菌数:300 /g 以下
・保存期間の一般生菌数:1.0×105/g
・大腸菌群、黄色ブドウ球菌:陰性
(4)食味テスト、官能試験を行う
保存試験と同様の日程で、社内の品質管理、開発担当または、食品の検査会社に依頼しておこないます。
社内で行うメリットは美味しく食べられる期限を設定できます。社内であっても、数名で同じ評価で行うと評価データとなります。外部に依頼するメリットは官能評価を一定基準で数値化されることです。
個人的には外部に依頼した場合にも、社内で食味テスト、官能試験は必ず行っていただきたいです。出来立てから、日が経つごとに、食感、風味、美味しさは落ちていくので、お客様に美味しく召し上がっていただける日数として確認しておきましょう。
(5)試験、テスト結果を記録する
開発時のデータは大切に残しておきましょう。製造しているお菓子に問題が起きたときなど、設定根拠が有無では、対応が変わります。自社で販売するだけでなく、販売先で試験結果を求められることもあるかもしれません。
賞味期限と商品期限で守るべき法律は?罰則は?
食品表示法の法律に則り、正しく表示する必要があります。
正しく表示しなかった場合、まず事業所に立ち入り検査が行われます。表示事項を表示せず又は遵守事項を遵守しなかった場合、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金。原産地(原材料の原産地を含む。)の虚偽の表示の場合、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金。
食品を摂取する際の安全性に重要な影響を及ぼす事項について、食品表示基準に従った表示をしない場合、最大で3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又は併科となります。
まとめ|賞味期限・消費期限は安心・安全を重視して決めましょう
当記事では賞味期限・消費期限決め方お菓子編を説明いたしました。
賞味期限と消費期限は製造者や製造メーカーが責任をもって決める必要があります。自社の基準を作り、すべてのお菓子を同様のルールで決定することをおすすめします。また、設定根拠を保管することも忘れずに行いましょう。
お菓子の食品表示の作成方法についてはこちらの記事でご紹介しています。
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