和菓子屋を開業、成功させるためにはポイントを絞り準備をする必要があります。将来、和菓子店を開業したい、開業予定の方はぜひ参考にしてください。
和菓子屋さん開業のために必要なものは?
・資金
和菓子屋の開業には、1000万円前後かかります。店舗の大きさ、製造する商品の種類によって機器等の金額も変わるため、費用が変動します。信用保証協会や日本政策金融公庫の創業支援を使って、融資を受け開業資金を用意することがほとんどで、創業にかかる費用総額の3分の1~2分のぐらいの自己資金が必要になることが一般的です。
費用の内訳としては
・店舗取得費
・工事費用(内装、外装、電気工事等)
・厨房設備
・店舗装飾、備品、消耗品
・包材
・WEB関係(HP、通販サイトなど)
・運転資金
和菓子屋では厨房機器に費用がかかります。
・製餡機
・餡練り機
・餅つき機
・ボイラー
・包餡機
・蒸煉機
・オーブン
・平鍋
・冷凍、冷蔵庫
機器を一式揃える必要はありません。店舗のコンセプト、商品ラインナップを検討したのち、機器を揃えましょう。製菓機械器具を扱っている会社ではリースや中古販売もありますので工夫をして費用を抑えましょう。
・資格
和菓子店を開業するときに必要な資格は以下のいずれかが必要です。
1、製菓衛生師
2、調理師
3、栄養士
4、食品衛生責任者
1~3は国家資格のため、経験と試験が必要になります。
4、食品衛生責任者については試験の必要はなく、保険所が開催する講習会を受講することで取得できます。受講費1万円程度、1日で取得できます。講習では、食品を扱うための基礎知識、公衆衛生学・衛生法規・食品衛生学を学ぶことができます。
・経験
和菓子店で修業、和菓子会社に就職して和菓子職人となり独立するのが一般的です。何年で経験を積めば独立できるというわけではなく、開業したいという思いで仕事を覚えて、独立できるスキルを身に着けていくことが必要になります。和菓子店を開業をしたいと考えているなら、実現したい夢に近い和菓子店や和菓子会社で働くことをおすすめします。
最近では専門学校を卒業して、すぐに和菓子店を開業する人もいます。和菓子のすべてを製造できなくても、製造する商品を絞り、売り方、集客方法を見いだせれば何年も修行をしなくても開業することができます。
・店舗、物件
まず「どんな和菓子屋さんにするのか=コンセプト」決めてから不動産屋さんに相談しましょう!
物件決定までの大きな流れはこちらです。
1. コンセプト決定
2. 商圏を分析する
3. インターネットで店舗物件などを調べる
4. 不動産屋さんに相談する
5. たくさんの物件資料を見る
6. 内見、周辺調査
7. 検討、利益計画確認
8. 物件決定
とにかく数多くの物件資料に目を通して、相場感、地域感、設備の違い、家賃の違いを肌で感じてください。たくさんの物件を見ていくことで、スケルトン物件、居抜き物件、などの良し悪しなどもわかるようになってきます。コンセプトを実現できる物件と出会えるまで、不動産屋さんと話をして、物件を見てください。
・手続
開業するために様々な手続きがありますが、落ち度があると万が一事故や食中毒などが起こった場合に保険が降りない場合があるなど取り返しのつかない事件へ発展することがあるので、所轄の機関と相談しながら進めていきましょう。
取り扱う商品、販売形式によっても必要な許可が変わりますが今回は「和菓子を製造、喫茶スペースも設ける。」定番のスタイルの必要な手続きは、下記の通りです。
1.「食品衛生責任者取得」
調理師の資格があれば必要ありません。
2.「防火管理者」
30人以上の収容できる店舗では必要となります。特定の講習会を受講する必要があるので、物件が決まりそうな時点で所轄の消防署に相談することをオススメします。
3.「飲食店営業許可証」「菓子製造業許可証」
工房設備のレイアウト、店舗設備資料等の提出書類も多く、地域ごとに認可基準も違うので必ず着工前に、設計士さんと共に事前に管轄の保健所へ相談に行っておきましょう。
4.「防火対象物使用開始届出書」
スケルトン状態から火器を使う厨房設備を設置したり、居抜き店舗でも、火器を使用する厨房設備の移動がある場合には所轄の消防署へ届け出が必要です。現状確認の意味合いが大きく、使用開始7日前までの届け出が必要です。
5.「開業等届出書」
すべての独立開業に必要な開業届。所轄の税務署に提出が必要です。個人で開業の場合は、地域の青色申告会に相談してみると良いでしょう。税務労務手続きの支援をしてくれます。税理士が決まっているようであれば税理士でいいと思います。
和菓子屋さんの開業を成功させる上で大事なポイント
・ポイント1:コンセプトを決める
開業を決めてから1番に着手すべきことはコンセプトを決めることです。
アイデアを書き出して「どんな和菓子屋さんにするのか」をコンセプトとしてまとめていきます。
アイデアは5W1Hに沿って書き出していきます。
・why なぜ:開業の目的
・who だれに:ターゲットのお客様
・where どこで:開業する場所
・when いつ:営業時間
・whatなにを:商品、提供する商品の特徴
・how どのように:提供方法、販促方法、サービス
アイデアの整合性を整えて、コンセプトとしてまとめていきます。
やりたいことが明確になり物件、店舗デザイン、商品のラインナップも軸からぶれずに考えていくことができます。また、やらないことも決めておくことも大切です。
・ポイント2:商圏を分析する
物件を決めるときに、重要なのが商圏です。商圏とは、店舗を構えたときに、そのお店に見込めるお客様の住んでいる範囲を意味します。
「実際に、自分たちのお客様が、どれだけいるのか。」これを目に見える形にすることで将来の売上予測を立てることができ自信を持った経営やより価値の高いスイーツ、サービスをお客様へ届けることができるようになります。
商圏を分析する方法は、いくつかあります。
1.人口統計調査で地域ごとに性別、世代、人数を把握する
世帯数、年齢、性別だけでなく、人口の増減もわかるため、5年後、10年後にどのように変化していくか予想しやすくなります。
2.消費者のライフスタイル分析
世帯収入、消費動向など、そのエリアに住んでいる人たちが普段どんな生活をしているのか分析していきます。近くのスーパーや不動産屋さん、他業種飲食店、金融機関などに話を聞いたり、どんなものが売れているかを見ていくとその街の傾向が見えてきます。
3.同業種、競合店の分析
同じ商圏に同業種、競合店がある場合は、必ず商品を購入して売れ筋商品、客層を調査しましょう。自分の独自化すべき点がより明確になり、より自信を持てるようになります。
4.移動手段によって商圏を設定する
「徒歩 15分圏内」「自転車 20分圏内」「車 30分圏内」など、移動手段によって想定商圏を変化させて商圏を設定すること街の見え方の視野が広がります。
・ポイント3:年間計画
和菓子店は月や季節によって売上の変動が大きくあります。一般的には9月~5月までは繁忙期、6月~8月は閑散期となるため、年間で利益を上げていくことが開業の成功ポイントになります。そのため、毎月の売上、仕入原価から営業利益をシュミレーションして、月ごとの計画を作り年間計画を作ります。
※売上=1日の想定売り上げ✕営業日数
※仕入原価=材料の仕入れ、人件費、賃貸料、広告宣伝費などの合計
※営業利益=売上-仕入れ原価
開業後は実績を表に入れることで、計画通りなのか?計画を下回っているか?を認識することができ、経営視点で打ち手を考えることができます。
・ポイント4:商品ラインナップ
和菓子店の商品ラインナップを決める方法についてお伝えします。
和菓子は「主力商品」「定番商品」「季節商品」「進物商品」の4つに分類することができ、それぞれに役割があります。コンセプトに沿って、自店で販売する商品・しない商品を決めてラインナップを年間スケジュールに落とし込みましょう。
・主力商品…お店独自のオリジナル商品
・定番商品…和菓子の定番商品
大福、団子、饅頭
・季節商品…日本の催事に合わせた商品
桜餅、柏餅、おはぎ、餅
・進物商品…賞味期限が長く、贈答用になる商品
最中、焼菓子、どら焼き、カステラ、羊かん
主力商品、定番商品に季節商品を組み合わせていくことが売上の山を作っていくポイントです。
季節商品をいつから販売し始めて、認知→購入に繋げるかも重要です。
また、消費期限が短い商品ばかりでは自家需要のみしか取り込むことができません。
賞味期限が長い進物商品もバランスよく組み合わせて、客単価を上げることも検討しましょう。
一般的な和菓子店のラインナップを紹介しましたが、最近は主力商品の「フルーツ大福」「どら焼き」「おはぎ」のみの販売に絞った和菓子店も増えています。コンセプトを決めるときに商品ラインナップの大枠は考えておきましょう。
・ポイント5:オリジナル商品の開発
作るのが得意だから、このお菓子が好き、だけでは長期的な成功に繋がりません。コンセプト、商圏のお客様のニーズからお店独自のオリジナル商品(主力商品)を開発していきましょう。商品の開発の仕方をご紹介させていただきます。
・定番商品を発展させる
定番の和菓子は時代の変化の影響を受けずに人気がある商品です。その中から商品を選び、独自の製法や材料を使い
自店のオリジナル商品を作っていきます。
・競合調査から商品選ぶ
商圏の競合を調査して、人気商品、需要の高い商品を探します。この商圏のお客様のニーズが高い商品ということになりますのでその商品に自店独自の付加価値をつけてオリジナル商品を作ります。
・流行りの商品を作る
和菓子にも流行りがあります。今はフルーツ大福、おはぎもメディアで取り上げられることが増えています。Instagramのトレンドをチェック、#和菓子、#和菓子店、#大福をフォローしておくだけで情報が集まってきます。その中から流行りをいち早く見つけて、自店らしさを加えて商品を開発します。
材料や商品、資材の仕入れ先と活用方法
材料は餡、砂糖、粉類、豆、季節商材などを専門業者から、商品は卸業者から仕入れます。製造が間に合わない場合にはOEMを活用することもあります。資材も忘れずに準備をしましょう。
・材料の仕入れ先1:あんこ、生あんの仕入れ業者
和菓子の核である、あんこの仕入れ先をを決めます。
あんこの仕入れは2種類の方法があります。
①あんこを仕入れる
②こしあんや白あんを作る生あんを仕入れる
(粒あんは自店で仕入れることになります)
①は製餡会社か和洋菓子の卸業者、製菓材料会社から購入することができます。
仕入れのロット等を確認して、作りたい和菓子に合わせたあんこを仕入れましょう。
②は製餡会社から生あんを仕入れます。生あんはいたみやすいため、製餡会社が直接配達することが一般的です。店舗の地域に配送可能な製餡会社を探して味の比較をします。生あんは、あんに仕上げて、自社のお菓子に合うか確かめてから仕入れるようにしましょう。
・材料の仕入れ先2:製菓材料問屋
砂糖、粉類、豆、季節商材は製菓材料卸問屋から仕入れます。ルート配達をしている問屋は毎週決まった曜日に材料を届けてもらえます。自社の仕入れ規模に合う仕入れ先会社を数社探して、主要な仕入れ材料はあらかじめ価格の比較をしておきます。
メリットはプロ仕様の材料が揃うこと。
支払いも月末締めの翌月末払いのところが多いので、資金繰りに余裕ができます。
デメリットは、数量が多いこと、砂糖や粉類は1袋30kgとなります。また、ケース単位の仕入れになることもあるため材料保管スペースが必要です。材料は賞味期限がありますので使い切れる量を注文しましょう。
・資材の仕入れ先1:ネット通販
資材はネットで仕入れるのが便利です。お菓子のサイズに合ったものをじっくり選ぶことができます。スポットで準備をする催事やイベントの資材もいろいろなお店で販売されています。全国に発送してもらえるので、店舗に足を運ぶ時間が削減できます。
シモジマやCUOCA、清和が有名です。価格を下げたい場合には大きなロットで注文、少量でいい場合には価格が上がってしまいますが使用量に合わせてロットを選ぶことができます。
お菓子を製造するときには、どう販売するかまで考えて、資材を忘れずに準備しておきます。
・商品の仕入れ先1:専門卸業者
製造できない商品は仕入れを検討します。製造できないからと販売をあきらめては売り上げを増やしていくことができません。自店でしか製造できない商品に専念をして、それ以外は業務用の卸業者から仕入れることも視野に入れておきます。
お菓子を仕入れる際には以下を確認しましょう。
1.価格
卸値を見て、販売できる価格か見積りましょう。
2.ロット
業務用で販売をしているため数量が多くなります。賞味期限内に消化できる量か、また冷凍納品の商品もありますので冷凍庫に入りきるかも確認が必要です。
3.サンプルを取り寄せ
美味しさ、サイズ、パッケージなど、実際の商品を見ておくと安心です。
・商品の仕入れ先2:OEMによる外注
「製造ノウハウや機械を持っていない場合」
「自社で製造をしているが製造が間に合わなくなってきた場合」
「自社製造の採算が取れなくなってきた場合」
こんなときにはOEMの出番です。
メリットは、機会損失せずに売上を伸ばすことができる、自店の製造の手間や投資を削減できることなどが挙げられます。
デメリットはロットが多い、自店製造よりも利益率が低いことがあります。販売可能なロットか利益を確保できる売価で販売できるかを見極めましょう。
OEMを依頼するときには希望や条件を決めておきます。OEMの依頼先と打合せを重ねて、自店に合う商品を作り上げていきます。
お菓子の売れる時期が知りたい方はこちら!
まとめ
いい職人さんであればあるほど、美味しい和菓子を作って売れば、お客様は買いに来て下さる!と自信をお持ちではないでしょうか?これから和菓子店を開業するなら、商品に価値をつけて高単価で販売できるかが継続してお店を続けられるポイントになってきます。コンセプトから事業計画、商品ラインナップの検討など開業のサポート・コンサルも行っておりますので、希望される方はまず「なごみや」にご相談ください。